今シーズンはQ&A方式でコラムを掲載します。
暑い季節も終わり、本格的に秋から冬の季節へ移り替わる時期を迎えました。今年も加湿器が必要になってくる頃合いですので、本コラムを再開したいと思います。
今シーズンは少し趣向を変えて、加湿や加湿器の使用にあたって世間一般に多く寄せられる疑問にお答えする「Q&A」の形で本コラムをお届けしたいと思います。
まず再開第1回目のテーマは「ウイルス対策に加湿は有効なの?」という疑問に対するお答えです。
ウイルスと加湿の関係は..
第1回のコラムでもお伝えしましたが、今から半世紀も前の研究で、気温を20℃以上かつ湿度を50~60%程度に保つとインフルエンザウイルスの感染力が弱まるという研究成果が発表されました。こういった”加湿に着目した”研究から、寒冷で空気が乾燥した状態だとインフルエンザウイルスの感染力が強まることも明らかになり、「インフルエンザの流行が冬に集中する」理由が明らかになっていきました。現在では、インフルエンザウイルスの活性抑止には、適切な湿度維持が効果的であることはよく知られています。厚生労働省は室内を十分な湿度(50~60%)に保つことがインフルエンザウイルスを予防する方法の一つとしてあげています。実際、過去インフルエンザが大流行していた時期は加湿器を導入したことでインフルエンザ感染者が減少した(あるいは発生しなかった)という老健施設や一般オフィスのご意見を多く耳にします。
新型コロナウイルスに対しての効果は?
それでは現在、正に世界中の関心事である新型コロナウイルに対してはインフルエンザウイルスと同じような湿度(加湿)による抑制効果は期待できないのでしょうか。
ワクチンが開発され、接種率が増えるにつれその効果も明らかになりつつあるとはいえ、新型コロナウイルスの存在が確認されてから今日まで、その実態には不明な部分が多く残されています。ですが、様々な専門家がそれぞれの視点で感染対策に取り組まれており、その中に加湿による感染予防に言及した興味深い発表がありました。
ニュース等で報道されましたので、ご記憶されている方も多いとは思いますが、2020年10月13日、神戸市にある理化学研究所などの研究チームが、スーパーコンピューター「富岳」を使った新型コロナウイルスの飛沫の広がりをシミュレーションした結果を公表しました。それによれば、オフィス内を想定し1.8m先に座った向かいの人にかかる飛沫の数は「富岳」での計算結果によると、湿度60%の時は、湿度30%の時にかかる飛沫の数の1/3程度になると予測されたとのことです。純粋に飛沫の量が感染の有無に繋がる可能性がどの程度かは不明ですが、インフルエンザウイルス同様、新型コロナウイルスに対しても加湿が有効な感染対策になる可能性があることを示唆した興味深い発表でした。
湿度管理と換気を適切に。
再開初回の今回は「Q. ウイルス対策に加湿は有効なの?」という疑問に対する回答で、答えは「A.(一定の)効果あり」とさせて頂きます。もちろん、長年の研究実績の蓄積があるインフルエンザウイルスと発見されて間もない新型コロナウイルスを同じに評価することはできません。どちらのウイルスにしろ、正しく加湿の効果を理解し、さらには適切な湿度管理を行った上での「効果あり」ですし、既にご存知のように新型コロナウイルスに関しては、換気の徹底はもちろん、根本的に「密」を避ける生活が何より大事です。それをご理解頂いた上で、少しでも感染のリスクを減らすために、インフルエンザ感染対策同様、加湿器を使って上手く室内の湿度を適正に保ち、この危険なウイルスの脅威に打ち勝って頂きたいと思います。