加湿はカビの栄養源。
前回まで、ウイルスや細菌に対して、いかに加湿器を正しく使えばよいかといったお話しをお伝えしました。今回の「Q&A」では、もう一つ加湿器を使って心配な「カビ対策」についてお伝えしたいと思います。
そもそもカビは「菌類」の一種で、他の菌類と同じく生息には一定の温度や空気、そして水分の存在が欠かせません。特に水分はカビの生育速度にも大きくかかわり、日本では高温多湿な梅雨時にその発生が大きく危惧されることがあります。逆に冬場は乾燥シーズンなのでカビの抑制には有効な季節と思われがちですが、今コラムのテーマである加湿器の利用によって空気中に「水分を供給する」こと自体がカビの抑制に逆効果ではないのか?という疑問が湧いてこないでしょうか。加湿器の使い方によっては、加湿器がカビの栄養源になってしまう可能性もありえるのです。
そこで、Q&A第3回目は「(加湿器を使った)加湿で室内にカビは発生しない?」というテーマで疑問に対してお答えします。
加湿器を使うと危険?カビは大敵。
まず知っておいて頂きたいのは、冬場に加湿器を使っても加湿器自体のお手入れをしっかり行って頂ければ、加湿器そのものにカビが発生する危険は回避できます。今回のテーマに謳った通り、怖いのは、加湿器を使っている「室内=壁や天井、床、窓、扉そして家具など」にカビが発生する危険です。
冬場に加湿器や暖房器具を使っている時に、窓に結露が起きている経験をされた方は多いと思います。詳しくは本コラム「加湿と結露対策」の回を参考にして頂ければと思いますが、冬場に暖かく湿った空気が外気で冷やされた窓ガラスに触れて結露水が発生する現象が起きます。これと同じメカニズムで、外壁や天井(特に最上階)、床面に部屋の内外の温湿度で、目では判別できない程度の水滴が発生することがあります。特に部屋の四隅は空気が停滞する「よどみ」が発生し、こういった場所では水滴が発生する危険が高まります。水分を吸収しない窓ガラスと違って、壁材など幾らか水分を吸収する材料を使っていると発生した水滴がその材料に吸収され、「湿っている」ことに気付かない場合もあります。それを見過ごしていると水分を好むカビの発生を引き起こすことになってしまいます。同じようなカビの発生場所として、あまり使わない(開け閉めしない)衣装ダンスやクローゼットの中も危険な箇所です。
カビの発生を防ぐには?
上述したように冬場は内外温湿度差によってさまざまな場所で結露水の発生が危惧され、それを栄養源としたカビの発生という実害が起こる危険をはらんでいます。言うまでもなく、室内に水分を供給する加湿器はその危険を助長させる存在にもなりえるわけです。
ですが、だからといって加湿器の使用に不安を感じることはありません。カビが発生する原因となる結露水の発生すなわち、加湿した空気が冷たい壁や床にできるだけ長く接しないようにすることで、カビの発生は防ぐことができます。具体的には、加湿した空気をとにかく「循環」させることです。
換気設備のあるお宅や建物では、常に換気をONにする、サーキュレーターなどで室内の空気を循環・撹拌させる、家具の配置を見直して空気がよどみそうな場所を作らないとともに拭き掃除しやすくする、衣装ダンスやクローゼットは定期的に開け閉めして中の空気を入れ替えるようにする、といった工夫が大事です。もちろん定期的に窓を開けての換気も有効です(せっかく加湿した空気を逃がしてしまいますが、ウイルス対策としても有効ですね)。
怖くない!カビ対策で加湿器も安心。
今回は「Q. (加湿器を使った)加湿で室内にカビは発生しない?」という疑問に対する回答で、答えは「A.空気循環といった結露対策に気をつければ大丈夫。」とさせて頂きます。カビの発生は加湿器を使っているかいないかだけに左右されるものではありませんが、ウイルス対策や細菌対策としても有効な加湿器を上手に使う手段の一つとして、カビ対策もしっかりと念頭に置いて加湿器の効果を有意義に活用して頂ければと思います。