加湿器の天敵、レジオネラ属菌。

前回は、今まさに広く世間一般の関心事であるウイルスに対して、加湿器の効果をお伝えしました。
今回の「Q&A」では、加湿器の使用自体で健康に悪影響を及ぼす危険がある細菌感染症についてお伝えします。中でも、命に拘る感染症を引き起こす「レジオネラ属菌」は、従来から加湿器の使用によって発症する厄介な細菌かのように、まさに加湿器の天敵のような存在として位置づけられてきました。

そこで、Q&A第2回目のテーマは「(加湿器を使って)レジオネラ菌は大丈夫なの?」という疑問に対してお答えします。

なぜ加湿器からレジオネラ属菌は発生するのか..

加湿器とレジオネラ属菌のお話をする前に、「レジオネラ属菌」とは何かをざっとご紹介すると、レジオネラ菌は現在まで約60種類存在することが知られており(これらを称して「レジオネラ属菌」といいます)、河川や湖沼水の水域、土壌や果ては水溜まりまで、水分を含む自然界の様々な場所に存在しています。このレジオネラ属菌が呼吸器からの吸引等で体内に侵入し、感染すると発熱や頭痛、胸痛、呼吸困難、下痢といった「レジオネラ症」を発症します。重症になると肺炎やまれに心筋炎なども引き起こし、場合によっては命にも係わることもあります。

では、なぜ加湿器を使うとこのレジオネラ属菌に感染するのでしょうか。加湿器に拘らず、レジオネラ属菌は水回りの汚れ(特にぬめり)の中にできたアメーバなどの原生生物に侵入し繁殖することが知られています。加湿器も貯水タンクに溜めた水を蒸発させて加湿に使用する製品がほとんどですから、もし貯水タンクなどにこの汚れ・ぬめりが発生し、それを放置しておくと、自然界から持ち込まれたレジオネラ属菌が侵入して繁殖する場合があるのです。そうなると、加湿された水蒸気にレジオネラ属菌が付着し、その水蒸気を吸い込んだ場合は感染の危険が高まることになるわけです。

加湿器からレジオネラ属菌の発生を防ぐには?

上述したように加湿器の使用によってレジオネラ属菌に感染する原因は、汚れやぬめりにあるといっても過言ではありません。どの加湿器にも取扱説明書に「定期的に清掃してください」といった注意書きが書かれていると思います。加湿器を頻繁にお手入れするのは大変かもしれませんが、危険なレジオネラ症を発症するリスクを回避するためには、できるだけ頻繁に(できれば毎日)貯水タンクを中心に洗浄や残水の拭取りを行って清潔に保っておくことが大事です。少なくとも、貯水タンクの水は使用前に必ず入れ換えることが基本です。

また、加湿器の種類によってはレジオネラ属菌が侵入しても感染の危険が少ないものもあります。特に、レジオネラ属菌は熱に弱い(60℃で5分間晒すと殺菌されるといわれています)ので、加熱式の蒸気加湿器では感染の危険を防ぐ意味では有効です。その他、空気清浄機能付きの加湿器によっては細菌に対する殺菌作用を謳っている製品もあります。

正しい使い方こそ最大の防御。

今回は「Q. (加湿器を使って)レジオネラ菌は大丈夫なの?」という疑問に対する回答で、答えは「A.しっかり清掃し、正しく使えば大丈夫。」とさせて頂きます。とにかく細菌類への対策として“清潔に保つ”ことに勝るものはありません。加湿器も同様で、汚れを防いでいつも清潔に使い続けることができればレジオネラ属菌はもとより、様々な雑菌に対して心配することなく使い続けることができます。多少の手間は掛かっても、ウイルス対策にも使える有用な道具である加湿器と上手に付き合い、その効果を十二分に引き出して、これからの乾燥シーズンに備えましょう。